オリーブってどうやって搾るの?
オリーブオイルがどうやって搾られているかって、あんまり知られていないと思います。一般的に知られている菜種油やゴマ油なんかの核油、すなわち種を搾るオイルだと、圧搾機でギューって搾ったら油が出てくるのがイメージできます。
では、オリーブオイルの場合はどうやって搾油しているんでしょうか?
大昔は、こんな風にたくさんの男たちが袋をぎゅうぎゅう絞ったり、足で踏んづけたりしてオイルを搾りだしていたんですね。かまどに火を焚いているのは、温度を上げることで採油率を少しでも高めようとしているようです。今で言うコールドプレスの真逆ですね。
もう少し時代が下ると、石臼でゴリゴリと潰すようになってきて、人力だけでなく馬を使って搾油するような方法が採られてきました。
なんだ、だったら家庭でもオリーブを育てて収穫したらオリーブオイルが搾れるのか?
はい、搾ることはできます。袋に詰めたオリーブ果実を1時間以上もみもみしてペースト状にしたら、それをろ紙にかけてポタポタ落ちてきた液体を集めます。水分が下に油分が上に浮いてくるので、それを慎重にスポイトですくい集めたら出来上がり。うまくすれば300gくらいのオリーブの果実からお猪口に一杯(10g)くらいのオイルが作れます。手が腱鞘炎になるくらい汗だくで頑張ってそのくらいです、はい。
オリーブに限らず、植物からオイルを搾るということは昔は大変な労力がかかる仕事だったんです。だからオイルはとっても高価なもので、なかでも最高ランクのエクストラバージンオイルというのは、かつては王様だけが口にできる最高の贅沢品だったんです。
さて、時代が下って現在はどのように搾っているのかというと、主流はほぼ遠心分離法によるものです。
これはイタリアで使われている遠心分離方式の搾油機。
まずは、こんなハンマーでオリーブの果実を粉砕してペースト状にしていきます。
ペースト状になったオリーブの果実は、今度はマラキサータンクという練り機におくりこまれて、30分~40分程度低速回転で練りこまれます。十分に練ることによって油胞細胞からオイルを引きはがすのです。
そして十分に練り込まれたオリーブペーストは、デキャンター(遠心分離機)に送り込まれて、毎分3,000回転以上の高速回転でオイルと水分に分離されていきます。このデキャンターが搾油機の心臓部、ここに各搾油機メーカーの独自のノウハウが詰め込まれています。
で、このようにオリーブオイルが搾り出されてくるのです。
植物油の製油というと、脱ガム、脱酸、脱色、脱ロウなど、様々な機械的、化学的処理を経て製品になっていくのですが、オリーブオイルはそれらの処理を一切しない、オリーブの果肉を搾ったそのままのものなんです。だからこそ、収穫してから搾るまでをいかに短時間で、鮮度を維持しながら搾っていくかが、品質を決めるもっとも大事な要素になるんです。
オリーブの収穫期には、イタリアでも日本でも、品質にこだわりをもったオリーブ生産農家の搾油工場に入った瞬間、それはそれはすばらしいオリーブの新鮮な香りに体が震えるものです。オリーブオイルが単なる食用油でなく、生鮮食料品であるということを実感して頂ける瞬間だと思います。