オリーブオイルは「味の拡大鏡」というのがオキオリーブの考え方。
オリーブオイルの4つのお仕事の中の一つ「香りを引き出す」作用が、味の拡大鏡を演じるんです。拡大鏡ということはいいものも悪いものも両方とも大きく拡げるということ。
ちょっと前に、イタリアンレストランのオーナーから相談がありました。知り合いのジェラート屋さんが作った試作品「ゴルゴンゾーラのジェラート」を頂いたんだけど、今一つ芳しくないお味なんで、澳 OKI Oliveをかけたら少しは改善するんじゃないかと思うんで、オリーブオイル持ってきてくれないか?って。

早速お店に行って、まずは、そのゴルゴンゾーラのジェラートを頂いて
「・・・んー、確かにあんまりおいしくないね、この味。」
ちょっと嫌な予感はしたんですが、乳製品と澳 OKI Oliveの相性は抜群に良いのでもしかしたら改善するなと、ゴルゴンゾーラジェラートに澳 OKI Oliveを回しかけて一口頂いたんです。
「!?・・・なにこれ、マズすぎる、もう食べモノじゃない!!!」
もともとあんまり美味しくない状態だったのが、オリーブオイルの拡大鏡効果のおかげで、その悪いところが一層強調されてしまったんです。
良くも悪くもオリーブオイルは味の拡大鏡。

でも、これはもともとの食材の味に問題があったケースで、オリーブオイルとの組み合わせが悪かったわけではありません。
オリーブ屋であるからには、これまでおおよそ口にするものは、すべてオリーブオイルをかけてその味を試してきました。お肉、お魚、野菜、パン、お米はもとより、果物やお菓子、お茶やコーヒー、ビール、ワイン、日本酒、口に入れるものはほぼ全てオリーブオイルを試してきました。
そんな中で、どうしてもオリーブオイルとケンカする食材が一つだけあったんです。それは
「カツオ」

いろんな食材に合わせてとてもいい働きをするオリーブオイルですが、カツオだけはどうしてもオリーブオイルとの相性が良くないんです。
オリーブオイルをカツオにかけると、カツオ特有の「鉄臭さ」がことさら強調されてしまうんです。カツオのウマみの特徴は、その黒潮海流で躍動する筋肉に流れる血の味にもあります。カツオという魚は鉄分をより強く感じる身質。オリーブオイルと鉄分との相性がすこぶる悪いようなんです。カツオがオリーブオイルと出会うと鉄臭さがさらに進んで「血生臭さ」として現れてきます
一番わかりやすい表現で言うと、小学校の時の鉄棒を握った時のあの手の鉄さび臭さ、あれです。あの独特の臭いは、手のひらについた皮脂が鉄棒の鉄分と出会うことで一瞬で反応したにおい物質(1-オクテン-3-オン)の臭いなんです。

それと同じことがカツオとオリーブオイルとの関係において現れるのです。カツオに対しては何回ともなく合わせてみました。刺身、ヅケ、焼き物、醤油炊き、さらにはお吸い物。もちろん、オイルもいろいろ取り替えます。ポリフェノールの弱いもの、強いもの、香りの強いもの、弱いもの・・・結果はいつも同じ。
「血生臭い」
お吸い物は、もしかしたら血合いを取り除いたのならうまくいくかもと、高いお金払って血合い抜きのもので試したものの、やはり鉄サビ臭さが出てくる。
同じようなお魚でもマグロはオリーブオイルと出会ってもそれほど鉄さび臭くはなりません。お刺身1人前(100g)の鉄分を比べると、カツオには1.9mg、クロマグロには1.1mgカツオのほうが圧倒的に鉄分が多いんです。では、なぜほかの油でなくオリーブオイルだけがカツオの鉄分と反応して鉄さび臭くなるのか?
先ほど、鉄棒を握った時の臭いの話をしましたが、皮脂の60%は、パルミチン酸、パルミトレン酸、オレイン酸という脂肪酸で構成されています。オレイン酸はまさにオリーブオイルの主要な脂肪酸、これが鉄分と反応して鉄さび臭さを作る原因になったんです。

オリーブオイルに唯一合わない食材が、オリーブを生業とする筆者の最も好きなお魚であるカツオだとはなんたる皮肉・・・。